養子縁組が無効になる原因と手続き

縁組がされたとしても、一定の条件を満たしていない場合には、無効とされることがあります。その原因としては、当事者間に養子と養親としての関係を結ぶ意思がない場合と、届出をしないことが規定されています。

まず、前者は縁組の意思がないことですが、実質的に養子としての関係を形成するつもりがないことについての規定で、他の目的のためだけに行うものは無効になるという意味です。

この2つの原因のいずれかに該当する場合には、縁組は無効になります。しかしながら、黙っていれば自動的に関係が消滅する、もしくは最初から無視してかまわないというわけでもありません。放置しておくと、有効であるのと同様の取り扱いがなされてしまうことがあるのです。

無効な養子縁組の具体例

たとえば、誰かが当事者に無断で届出を行った場合や、一方が病気等によって有効な判断を行うことができない(事理弁別能力がない)場合にも無効になります。こうしたケースにおいては、有効な法的行為とされないのは当然のことでしょう。

本人達に縁組の意思がない状態において、他人や当事者の一方が役所に届出をした場合でも、受付としては実質的な審査を行うわけではありませんので、受理されてしまうことになります。したがって、本来は無効な養子縁組であっても、形式的には効力を発生させてしまうことになります。

一方の当事者が事理弁別能力を失っている場合にも、法的に有効な意思表示を行うことができないため、効力に影響が出ることになるのです。この場合にも、届けが提出されていれば、何もしないと有効な場合と変わらない扱いがされてしまいます。

養子縁組が無効な場合の手続き

本来なら無効な縁組であっても、戸籍に記載されてしまったままで放置しておくわけにはいきません。そこで、訂正や削除のために手続きをする必要があります。

家事審判法によって、調停前置主義が定められています。まずは無効確認調停の申し立てを行わなくてはならないとする規定です。ただし、裁判所によって、事件を調停に付することを適当でないと認められれば、調停を行うことなく訴訟を提起することができます。たとえば、相手の所在が不明になっている場合や、繰り返し縁組が行われているような場合が該当するとされています。

審判や判決が出たら、1ヶ月以内に必要書類である審判書や判決書の謄本と確定証明書を添付して、戸籍訂正の申請を行います。相手方は市町村長となります。ただし、訂正申請しかしていない場合、経過が戸籍に記載されてしまいます。そこで、養子縁組がされた経緯を抹消したい場合には、戸籍再製の申し出も行う必要があります。

これに加え、今後にも虚偽の縁組がされるおそれがある場合には、不受理申し出をしておくと安心です。期間が6ヶ月に限定されていますので、未来に向かってずっと安心というわけではありませんが、一定期間だけでも安全になります。

たとえ無効な場合でも、こうした手続きがないと、戸籍の上で養子と養親の関係のまま、記載されてしまいます。必要に応じて、弁護士や司法書士、行政書士といった法律の専門家に相談するとよいでしょう。

無効な縁組の追認

要件を満たしていない法律行為であっても、後に必要な条件を満たした状態で追認することによって有効にできるケースがあります。ただし、養子縁組については民法総則の規定が原則として適用されず、追認はできないのが基本となります。

ただし、これには例外があります。15歳未満で養子になるためには法定代理人の承諾が条件となっているのですが、有効な承諾がないために無効となっている場合には、本人が成人した後に追認することは可能とされており、この時には縁組をした段階にさかのぼって有効になります。