養子の解消(離縁)の条件と手続き

養親との親子関係を解消するためには、離縁の手続きをすることになります。両者の同意によって簡単に済む場合もあれば、話し合いが難航して泥沼に陥ることもあります。また、原則として認められていないケースもあります。

分けて考えなくてはならないのは、普通養子縁組ならお互いの意思の一致によって離縁することができますし、話し合いがまとまらなくても調停などの対策を講じることができます。しかし、特別養子縁組の場合には、特殊な条件が揃った場合を除いて、原則として親子関係の解消はできません。それぞれの場合について見ていきましょう。

特別養子縁組における離縁

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まず、原則として特別養子縁組の場合には離縁はできません。ただし、条件を満たした場合に限り、親子関係の解消をすることができます。

条件とは、養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があることと、実父母が相当の看護をすることができることの2つです。一方だけではなく、両方の要件を満たさなくてはならないことに注意が必要です。

また、特別養子縁組の離縁は上記の条件を満たしている場合であっても、家庭裁判所に請求しなくてはならず、当事者で話し合って同意したとしても、それだけで実現するわけではありません。届出書を提出すれば手続きが完了するというものではないのです。なお、養父母との関係が解消されると、実父母との親子関係が復活します。

なお、家庭三番所に請求することができるのは、養子と実父母、検察官に限定されています。したがって、養父母からの申し立ては受け付けられません。

特別養子縁組は、一度は実父母との親子関係を解消させ、養父母の実子に近い扱いをするものですので、簡単に離縁をすることはできないのです。したがって、厳重な条件を満たした場合にのみ認められています。

普通養子縁組における離縁

この場合には、それほど厳密な条件は課されていません。養子離縁届けを出すことによって、親子としての間柄を解消することができます。届出書によって終わらせることになるのです。

たとえば、再婚によって連れ子が縁組をしていた場合には、親が離婚したら親子としての関係も解消するのが通常でしょう。こうした場合をはじめ、離縁の際には手続きを行うことになります。

なお、当事者で話し合う競技離縁、調停離縁、裁判離縁の三種類がありますので、話し合いがまとまらないからと言って諦める必要はありません。

協議離縁とは、養子の年齢が15歳以上になっている場合には本人が、15歳未満なら法定代理人が養親と話し合うことになります。ここでうまく話がまとまれば、役所に養子離縁届出書を出すことになります。

調停離縁とは、協議が成立しない場合に行われるもので、家庭裁判所に調停を申し立てることによって行います。調停によって親子関係の解消が決定された時には、10日以内に届出書を出すことになります。

裁判の場合には、無条件に認められるわけではありません。調停も成立しない場合の最後の手段ですが、条件として、以下の理由が必要とされます。

養親または養子から悪意の遺棄をされた。
養親または養子のどちらかがの3年以上生死不明である。
その他縁組を継続し難い重大な事由がある。

裁判によって認められた場合には、確定から10日以内に養子離縁届を提出することになります。

届出書に必要な書類

協議か調停か裁判かを問わずに共通して必要になる書類として、養子離縁届出書と戸籍謄本があります。ただし、本籍地の市区町村に対して届出る場合に限り、戸籍謄本は不要です。

このほかに、協議による場合には双方の印鑑と成人の証人2人分の署名と押印、調停の場合には調停申立人の印鑑と調停証書の謄本、裁判の場合には申立人か訴えの提起者の印鑑と確定証明書、審判書または判決書の謄本が求められます。

離縁にかかる慰謝料

慰謝料や手切れ金、迷惑料など、様々な名目で金員の受け渡しが行われることがあります。スムーズに話し合いを付けるためとは言え、口頭でのやり取りだけで済ませてしまうと、言った言わないの水掛け論に終始してしまうこともあります。書面に残しておくことや、弁護士や司法書士といった専門家に相談しておくと安心です。

もし慰謝料を支払った時には、受領を証明する領収書をもらっておいたほうがよいでしょう。

離縁の後の姓

養子は離縁が成立すると元の姓に復帰するのが原則です。ただし例外があります。縁組をしてから7年が経過している場合には、そのままの姓を名乗り続けることができるのです。このときには、「離縁の際に称していた氏を称する届」を提出する必要があります。

届出書の提出は離縁から3ヶ月以内に行う必要があり、本人が届け出る必要があります。対象となるのは、本籍地か所在地の市区町村役場で、印鑑と戸籍謄本を一緒に持参する必要があります。これによって、養親の姓を名乗り続けることができます。

離縁と相続

親子関係を解消することによって、相続にも影響が出ます。子供としての立場があれば、あるいは養親としての立場なら遺産を引き継ぐ権利があっても、離縁によってそれがなくなるためです。

離縁によって養子と養親でなくなれば、それによって相続の権利の消失が生じるだけではなく、下位の法定相続人が権利を得ることもあります。つまり、親族関係にある他の人にも関係が出てくる可能性があるのです。

養子か養親の一方が死亡した場合

何もしなければ、関係が解消されることはありません。すなわち、離縁の効果は発生しません。これは結婚の場合と同様で、特別な手続きがなければ、死亡によって即時に無関係になるわけではないのです。

当事者の一方が死亡した後に離縁をする場合には、家庭裁判所の許可が必要です。生き残っている側だけの意思表示と届出によって処理することはできないのです。協議できない代わりに、裁判所に関与してもらうことになります。

一方が死亡している場合には、家庭合判所の審判書の謄本と確定証明書、戸籍謄本、証人2名も必要です。手続きをしなければ、そのままの状態が維持されます。